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県の過失否定
愛知県のビジネスホテルの耐震偽装問題では、一審で、建築確認をした県の責任が認められていました。しかし、その判決が二審でくつがえりました。

同様の訴訟では、建築確認を行った特定行政庁の責任は認められていません。おそらく、県の責任を認めた判決が例外的なものなのだろうと思います。一審の判決は、建築確認制度のあり方についてのひとつの考え方を示したとして評価することができますが、一般に認められるものではなかったということなのだろうと思います。

建築確認を行った特定行政庁の責任は認めない判決は、ますます、建築確認の意義を低下させるのではないかと思います。建築確認は、建築を行ううえの、余計な手間と負担にすぎなくなってしまいます。

違法建築が出現した場合の責任を負わないのであれば、建築確認のような事前の取り締りには意味がなく、事後の取り締りを徹底したほうが良いと思います。「無謬」ではないということが明らかな制度では、責任を免除するという方法は適切ではありません。一方で、裁量の余地を広げ、大幅に許可としての権限を強くすれば、少なくとも建築主事の判断は「絶対」となるので、「無謬」とすることができます。そのような強い権限の制度にするか、やめてしまうのがいいだろうと思います。せめて、建築確認の意義を大幅に限定すべきです。

従来、建築確認の効力や能力についての誤解があったと思います。それが裏切られたのが耐震偽装だったと思います。今でも、建築確認に位置づけは、人それぞれに違った捉え方をしているのではないかと思います。明確にすべきです。


中日新聞:二審、県の過失否定 半田耐震偽装で名古屋高裁:社会(CHUNICHI Web)


2010年10月30日 朝刊

 姉歯秀次・元1級建築士(53)による耐震強度偽装事件で、愛知県半田市のビジネスホテル「センターワンホテル半田」の運営会社がホテル建て替えを余儀なくされたとして、建築確認をした県などに計2億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で名古屋高裁は29日、「当時の法令で建築確認審査に落ち度はなかった」として違法性を否定。県の過失を認めた1審判決を変更し、県への請求を棄却した。

 一方、姉歯元建築士に設計を委託した業者を選んだコンサルタント会社、総合経営研究所(総研)の賠償責任は1審に続いて認定。県と総研に計5700万円の支払いを命じた1審判決を変更し、総研にのみ改修費や休業補償として1億6100万円の支払いを命じた。

 判決理由で岡光民雄裁判長は、建築確認を担当する県の建築主事の役割を「関係法令で直接定められた項目以外、審査する義務はない」と指摘。見逃された偽装の一部は「図面を詳細に検討すれば判断できた」と認めつつ、時間的制約や法令が定める審査基準を理由に建築主事の注意義務違反はないと判断した。

 1審の名古屋地裁判決は建築確認を「危険な建築物を出さない最後の砦(とりで)」と定義した上で、「法令が明示した基準だけでなく、安全確保のために一般的な基準も考慮すべきだ」と判示。偽装を見逃した建築主事の落ち度を認め、県と総研側が控訴していた。

 神田真秋愛知県知事の話 主張が認められた妥当な判決。今後も適正な建築確認を行い、県民の安心、安全の確保に努める。

 総研の代理人弁護士の話 到底納得できない。上告も考える。



この判決では、コンサルタント会社が負うべき責任を大幅に認めています。これについて、私は違和感を感じます。

おそらく、報道からしか情報を得ていないからだと思いますが、理由がよくわかりません。どのようなコンサルタント契約だったのかによると思います。また、建築については、所有者、建築主、設計、施工、監理といった業務の中で、原告である所有者(建築主?)の責務があると思います。そこがどのように扱われたのかによって、コンサルタント会社という曖昧な存在の責任が変わってくると思います。

建築関係の法律や制度は、責任関係などが、現実に即していないまま放置され続けているので、抜本的に見直すべきです。それは、司法の場で行われるべきものでも、行政の裁量によって行われるべきものでもなく、立法府が取り組まなくてはいけないものだと思います。
by gskay | 2010-10-31 04:49 | 真相 構図 処分