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公団住宅は大丈夫?
耐震偽装事件のかげで、公団マンションの不適切な実態が、チラチラと見えます。かつて、公団の分譲マンションがありました。公団自体は、URという団体に引き継がれ、今は、分譲はしていません。

公営の住宅と混乱もあるようですが、公団住宅は、分譲でも賃貸でも、民間より安いと言うことは、今も昔も、全然ありません。むしろ、高価です。

公団は、新しい「住」のスタイルを提供してきた輝かしい歴史を持っています。ニュータウン建設を推進して街を変えてきました。様々な住宅設備を研究し、日本人の生活のスタイルを変えてきました。日本の住宅を改革して来たリーダーだったと思います。先進性と、公的な背景という安心とにより、日本で最大で最強のデベロッパーとして、様々な成果をおさめてきたと思います。

分譲の末期の頃は、値段の付け方が雑だったり、先進性が乏しくなったりと苦戦していたようですが、強気のままだったような印象があります。公的な団体であり、建設省ないし国土交通省と強い絆でつながっているだけで、「最強」だったと思います。

その公団の末裔であるURが、長年の不手際を追及されているようです。

耐震偽装の関連では、構造計算書を紛失していたり、管理が悪くて閲覧できなかったりという不手際が報道されました。これは、手続きの問題で、性能の関わる問題ではないのが、せめてもの救いでした。

一方で、欠陥工事によって大量の建て替えが行われているという話も伝えられました。欠陥工事は、施工レベルの問題で、立証や責任の整理が難しい問題ですが、前向きな対応は、問題に対する対応の見本になるものかもしれず、少なくとも、設計までは疑う必要はないようでした。

そんな中、欠陥工事で大量の建て替えが行われる団地から、耐震強度への不審が呈されました。引用を見る限り、かなりグチャグチャです。

都市再生機構マンション、耐震強度は基準の58%


 構造計算書を多数紛失していた独立行政法人・都市再生機構(旧都市基盤整備公団)が、東京都八王子市で1989年に分譲したマンション1棟の耐震強度が、最弱部分で基準の58%しかないことが、社団法人・日本建築構造技術者協会(JSCA)の調査で分かった。

 建築確認が免除されている公的機関が建設した建物の設計で強度不足が確認されたのは初めて。また機構はこのマンションの計算書も紛失したとして、「再々計算書」を作成したが、JSCAの分析では、同計算書には柱の強度の水増しなど十数件の不審点があった。事態を重く見た国土交通省は、機構の担当者から事情を聞くなど調査に乗り出す方針。このマンションでは悪質な手抜き工事も判明しており、機構による住宅の信頼性は大きく揺らぐことになりそうだ。

 このマンション(6階、19戸)は機構が88〜92年に建設したマンション群46棟のうちの1棟。構造設計は都内の設計会社に下請けに出されていた。元1級建築士・姉歯秀次被告(48)による強度偽装事件をきっかけに管理組合が、機構から提供された構造図の分析をJSCAに依頼。その結果、耐震強度は6階が基準の58%、1〜5階が65%しかなく、補強の必要がある。

 一方、機構は同マンションの構造計算書を「紛失した」として、「再計算書」、「再々計算書」を作成。この再々計算書についても住民側はJSCAに分析を依頼した結果、〈1〉柱の強度を割り増し〈2〉大梁(はり)にかかる力を低減〈3〉床の鉄筋量を過大評価——など十数か所に不審点が判明した。

 これらについて機構は「JSCAの調査結果の中身をよく検討し、対応を判断したい」としている。

 同マンション群では、鉄筋不足など手抜き工事が次々と発覚し、46棟中20棟を建て直す異常事態となっている。問題のマンションは建て替え対象とはなっていないが、手抜き工事も加わって実際の強度は58%を下回る恐れもある。

 国などに準ずる機関とされる都市再生機構は、建築確認を免除されており、計画を自治体に通知するだけで建設に着手できる。今回、強度不足が判明したことで、構造計算書を点検する動きが他の機構マンションにも広がる可能性もある。
(2006年6月2日3時3分 読売新聞)

民間が事業主である場合、確認申請を経て建築確認されます。一方、公的な組織では、計画通知と呼ばれる特例を経て建築確認が行われるそうで、微妙にニュアンスが異なっているようです。また、違法建築の取り締まりについても、特例です。

引用のケースは、再計算や再々計算の問題であり、設計段階の建築確認とは離れているので、一連の耐震偽装と同列に考えるべきではないと思われます。設計からダメだったとは言えません。

しかし、再々計算の不審点については、きちんとした対処が必要で、なぜ、不審な再々計算をしているのかを明らかにしなくてはいけないと思われます。「偽装」と、「見解の相違」は紙一重です。辻褄あわせに、不法な計算や書類の作成をしている点は同じです。この件は、位置付けは異なるものの、耐震強度偽装問題と捉えなくてはならないと思います。影響は小さなものではすまされないと思います。

まず、公的な組織でさえ耐震計算がいい加減だったとしたら、設計段階にしろ、補強のための耐震診断にしろ、信頼はできません。これは、国全体が耐震化に前向きになっていることに水をさすことになると思います。いい加減な検査がまかり通っているとしたら、そんなものに費用を費やす気にはなれません。また、そんなことで、違法として取り締まられるのも困ります。

また、いくら公的な組織で、特例の対象とはいえ、全容解明が必要だと思います。公団が、手がけた物件を全てチェックし、氷山の一角なのかどうかを明らかにしなくてはなりません。何といっても、最大最強のデベロッパーであっただけに、すごいことになりそうですが……。

きちんと対応したうえで、状況が明らかにならない限り、住宅の改革のリーダーであった公団は、施工の欠陥や、偽装にかけてもリーダーであったのではないかと疑わざるをえません。

その上、仮に沈静化を待ち有耶無耶に持ち込もうなどということがあるなら、隠蔽にかけてもリーダーだったということになりかねないと思います。うまく隠し通せば、誰も気付かないので、非難は起こらないとは思いますが……。
by gskay | 2006-06-12 12:16 | 政治と役所と業界