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元建築士の実刑判決
能力不足であるにかかわらず、無理な設計を引き受け、苦し紛れに改竄を行って、デタラメな設計をしたところ、建築確認をパス。これに味をしめてしまったのだと思います。たくさん仕事をこなして、収入を上げたいと思ったのでしょう。

建築主や元請けに言われるがままに「経済設計」できたのは、もともと計算なんてしておらず、適当にコンピューター上で偽装していたから。また、「経済設計」をした理由は、建築主や元請けから文句が出ず、やり直さずに済むから。

まともに「経済設計」を目指して計算したら、試行錯誤で時間がかかる。その時間を節約。苦心の経済設計も建築主や元請けからは、もっと何とかして欲しいと文句を言われてやり直しが、しばしば。そこも節約。

構造計算は、コンピューター上でやってしまえば、検査も緩く、中身はほとんど検査しない。合格しやすいばかりか、改竄しても見抜かれない。だったら、試行錯誤はやめにして、書類を偽造してまうのが手っ取り早い。

おかげで、数もこなせる。建築主や元請けの期待にかなった数値にするのも簡単。

元建築士がやったことの背景に、「経済設計の要求」があったとして、当初、非難が上がりました。しかし、その要求は当然のこと。性能の極大化と裏表の関係にあり、同じ材料なら最大に性能を求め、同じ性能なら最小の材料を目指すのが当然です。その要求自体は悪ではありません。しかし、その要求が何重にも逆手にとられた犯罪だったと思います。

仕事も速く、要求通りの仕事をしてくれるのだから、仕事は増えたと思います。

そうした仕事を可能にしたのは、やはり、計算ソフトと検査システムの不備だと思います。簡単に改竄可能なソフトと、違法な計算書が検査の網にかからないという仕組みさえなければ、彼にはどうしようもなかったことです。杜撰な仕組みが背景にあったからこそ、なしえた犯罪だと思います。

その点は、彼を裁く上では重要ではないかも知れませんが、事件の本質を考える上では重大なポイントです。忘れてはいけないことだと思います。

また、彼の罪は、事件を起こしたことだけではありません。国会での証言を含めた彼の発言が、事件の印象を全く変えてしまいました。その結果、様々な誤解が生まれ、混乱が生じたと思います。国会も、マスコミも、完全に振り回された形になってしまいました。

ただ、彼の発言がなかったとしても、高度な技術に関する議論を必要としており、今の国会やマスコミでは、見当違いな騒ぎをすることくらいしかできなかったのかも知れないと思います。その陰では、国土交通省の責任や問題点が見事に有耶無耶になっているようですが……。

彼には、事件を起こしたという罪だけでなく、事件発覚後に事件の本質を隠してしまうような滅茶苦茶な発言をしたという罪が加わっています。おかげで、問題とすべきポイントがよくわからないまま、混乱だけがエスカレートし、今は風化に向かっているような気がします。

変な誤解や新たな先入観を残した一方、もっと追及されなくてはいけない点が放置されてしまい、事件を教訓とした法改正も、随分と矮小化されたものになっているような気がします。そのきっかけとなるような彼の言動も、事件における彼の位置付けから忘れてはならないところだと思います。彼の言動がもたらした悪い影響は克服されなくてはなりません。

彼が何と言おうと、もっとしっかりと問題に取り組むべきでした。あるいは、これからでも、取り組んでいくべきだと思います。彼のことはともかく、やるべき人が、やるべきことをやらなくてはならないはずです。
by gskay | 2006-12-27 01:33 | 真相 構図 処分