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耐震偽装が騒動となるきっかけ
昨日のエントリで取り上げた福岡県篠栗町の分譲マンションの方が、姉歯元建築士の耐震偽装事件よりも早く問題になっていました。そればかりか、姉歯元建築士の建物の場合、指摘されてはじめてわかる程度の不都合しか無く、住民や所有者には寝耳に水だったのに対し、篠栗町の分譲マンションでは、いろいろと不都合があったようで、より深刻だったのではないかと思います。しかし、世間の注目は、姉歯元建築士の耐震偽装のようには高まらず、放置されてしまいました。

設計業者と施工業者の責任のなすり付け合いや、住民にとっては誠実とは感じられない売り主の対応に翻弄されていたのではないかと想像します。施工を主に問題視していたのかもしれません。また、民民の問題としてしか考えておらず、建築確認や検査は、眼中になかったのではないかと思います。

詳しいことはわかりませんが、違法な性能しか持たない建物が、建築確認や検査をパスして適法な手続きのもとに建てられ、分譲されてしまったという点では、姉歯元建築士の耐震偽装と変わらないのではないかと思います。ただ、施工の問題が、姉歯元建築士のケースに比べ比重が多いのかもしれません。設計レベルであれば、図面の上でチェックができますが、施工の問題について明らかにすることは、難しいのではないかと思います。

福岡県篠栗町の分譲マンションの場合も、第一次耐震偽装騒動に劣らぬ重大な事件であったと思います。しかし、問題が複合的で、単純ではなく、論点も争点も多岐にわたる点や、住民が立ち上がることで、はじめて問題が明るみに出たという経緯は、耐震偽装騒動とは大きく異なるところではないかと思います。

一方、姉歯元建築士の耐震偽装は、検査機関の指摘によって表面化しました。また、問題は、施工ではなく、単純に設計の問題であると認識されました。単純な問題として整理されていた上に、検査機関が関与したことで、耐震偽装があのような騒動に発展したのではないかと思います。

耐震偽装発覚の詳細な経緯には、いろいろなエピソードがあるようですが、それはともかく、最初に問題に対して立ち上がったのが、検査機関であったということを、あらためて評価すべきではないかと思います。しかも、「独立系」を旗印にする検査機関でした。

篠栗町の分譲マンションとは異なり、第一次耐震偽装では、建物を使用する分には、不都合らしい不都合がなかったので、おそらく、検査機関が動かなければ、放置されていたのではないかと思います。住民も所有者も、気付かなかったのではないかと思います。

ところが、検査機関が問題に気付き、動き出した。

検査機関が問題に気付いて動き出したということが、耐震偽装が重大事件に発展するきっかけになったと思います。

結局のところ、耐震偽装については、どの特定行政庁の建築主事も、見逃していました。他の民間検査機関も同様です。そして、業界最大手の機関にいたっては、告発があったのに、問題として取り上げるという判断を下せなかったと伝えられています。

これに比べ、イーホームズは、偽装を見逃したかもしれないが、問題に気付き、重大性も理解でき、実際の行動に移したという点で評価すべき点が多いと、今更ながら思います。

それにひきかえ、特定行政庁や他の検査機関、とりわけ最大手の機関は……。

福岡県篠栗町の分譲マンションの建築確認や検査をどこが行ったのかは知りませんが、特定行政庁も検査を行った機関も問題を指摘できず、住民に実際の不都合が出てから問題が明らかになっています。このケースで、特定行政庁や検査機関が動いていれば、展開は大きく変わっており、その後の耐震偽装騒動にも影響を与えていたのではないかと想像します。

あらためて、イーホームズを評価したいと思います。実際の不都合が生じる前に、検査機関が問題を指摘したという画期的なはじめての事例になっていると思います。

そうは言っても、このようなこじれ方になっていることを納得するわけにはいきません。もっと視野を拡げて、明らかにしていくべきことがたくさんあるように思います。
by gskay | 2007-02-27 14:43 | 揺れる システム