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民主大勝、自民大敗?
統一地方選挙の年の参議院選挙は、自民党が不利になるとはいわれていました。例外は、衆参同日選挙をした場合。地方組織が、きちんと機能するかどうかの違いだと言われているようです。

「亥年現象」と言われて、投票率が問題になっていましたが、それは、投票率の低下傾向とあわせて考えた時の問題で、「亥年」は地方組織が動かず選挙運動が難しいことが第一の意味だったと思います。

地方選挙が終わってしまうと、地方政治家は政党の選挙活動よりも、地方の政治に身を入れるようになります。任期が4年なので、自分の選挙を前提とした参議院選挙への応援は、この次の参議院選挙で間に合います。このため、地方組織が頼りの政党が不利になってしまいます。

もし、衆議院選挙を同時に行うと、衆議院議員の組織もフル活動すると同時に、次の地方選挙の前に衆議院選挙が必ずあるとは限らないので、地方政治家による応援にも熱が入ります。

それをわかっていながら、衆参同日を選ばなかった割には、自民党が善戦したと思います。少なくとも比例で、議席を減らしていません。

2001年の選挙との比較は困難です。あの時点では、自由党が民主党とは別の政党でした。自民党の独壇場となった上に、前首相への人気の効果が加わっていたからです。

比較の対象とすべきなのは、2004年だけです。それも、郵政問題以前の選挙であるため、国民新党および日本新党が分かれる前であったという条件を加味して考える必要があります。

国民新党が、今後の政局でどのように振る舞うのかはわからないものの、自民党に勘当されたり、自民党から家出したりして出来たような政党なので、自民党の一部とカウントしてもいいのではないかと思います。つまり、比較の対象となる2004年の自民党の選挙結果は、国民新党の分を差し引いておかなければ比較はできません。

そう考えると、自民党への支持が下がっていると考えるのは誤りではないかと思います。

一方、民主党は、比例でも議席をのばしています。これは、自民党から議席を奪ったというより、自民党以外の政党から議席を奪ったと考えるのが妥当ではないかと思います。具体的に民主党に議席を奪われたのは、公明党。加えて、社民党。影響は少ないようですが、強いて言うなら共産党。

新党日本については、代表の個性に依存していて、国民新党と同様に自民党から飛び出して出来た政党という色合いは薄まっているので、よくわからない存在だと思います。昔の、いじわるばあさんや木枯らし紋次郎がなし得なかった個性での当選を達成しているようで、主張への是非はともかく、意義深いと思います。

議席を確保できなかった政党・政治団体のうち、イーホームズの藤田社長が応援していることもあって、「9条ネット」には注目していました。政党として議席を得るのが難しいばかりか、肝心の天木候補個人の得票も、たとえ、大政党からの出馬でも当選は難しい数でした。仮に自民党から出馬して、藤田社長が気に食わない候補と対決しようとしても、気に食わない候補の上にたつことはできなかっただろうと思われます。

日本新党が既存の政党として扱われ、メディアに出る機会があったのに、他の政治団体にはそれがなかったことは、大きく響いているのかもしれません。全く新しい政治団体を作っても議席を取るというのは、並大抵のことではできないことのようです。

さて、比例で見る限り、自民党は惨敗していません。

しかし、選挙区では、惨敗です。これは、自民党が惨敗したというより、自民党と公明党の選挙協力が惨敗したということだと思います。

前回の衆議院選挙は、この選挙協力が成功しました。しかし、今回は、惨敗です。

もともと、自民党が単独で衆議院の小選挙区や参議院選挙区の一人区で勝つのは難しく、選挙協力によって競り勝っていたにすぎません。その選挙協力が、良い選挙結果に結びつかなくなってしまいました。

地方組織では、自民党組織と公明党組織が簡単に連携できるものではないと思います。

公明党との長期の連立のため、自民党の地方組織の結束が崩れたと考えることもできます。ただ、比例の結果を見る限り、そうとは言い切れない部分があります。責任をとって役職を辞任するという自民党の幹事長は、実は、それなりに良い成果を出しているのではないかと思います。自民党支持者を失ってはいません。問題は、選挙協力がうまくいかなかったことにありそうです。

ところで、公明党の場合、自民党をパートナーにし続ける理由が希薄です。このため、公明党が一枚岩を維持できなくなった可能性があると思われます。国政に代表として参加している面々には、連立を是とせず、むしろ、民主党の方に親しみを感じている勢力もあるのではないかと思います。少なくとも、自民党との選挙協力のメリットは失われました。

新たな枠組みに向けて、公明党がどのように振る舞うのかが、重要だと思います。公明党がキャスティングボードを握っているという点よりも、公明党内で、既存の連立をとるか、民主党をとるかでもめることが考えられ、その結果次第で、今後の政治勢力の枠組みが変わってしまうと思います。

もちろん、民主党の方も寄せ集めで、一つの政党を作っているが、選挙協力と変わらないくらいの弱い絆しかないようなので、どうなってしまうかわかりませんが……。

今回の選挙は、民主の一人勝ちです。選挙のための政党として、しっかりと機能を果たしたと思います。一方の自民は、選挙協力に失敗したものの、大敗という状況ではないようです。ダメだったのは公明党で、今後のパートナーをどのように選ぶのかよく考えなくてはいけないと思います。また、社民が民主の割を食っているようです。

2004年と同じ傾向が続いており、そこに与党の選挙協力失敗が加わった選挙結果ではないかと思います。

ところで、もし、同日にしていたら、政権交替が実現していたという意見もあるようですが、これは何とも言えないと思います。今回の地方区は、接戦を制した結果であり、逆転もありえる範囲だったと思います。

もし、自民党と公明党の選挙協力がスムーズな場合、郵政選挙ほどではないにしても、与党が勝った可能性があります。衆議院でも、参議院でも。

それを、与党として選択できなかったのは、公明党に煮え切らない態度があったからだと思います。参議院の地方区で負けたところで、政権を下りる必然が生じることはありませんが、衆議院での負けは、直接、政権交代を意味します。それだけのリスクを自民党が望まなかったということだと思います。

公明党の方も、連立を固守しようというなら、同日選挙を行う価値を認めたのではないかと思います。あるいは、連立解消、選挙協力解消をするという決断をした場合でも、今回の参議院選挙の結果を先取りする形で、同日へ進む可能性があったのではないかと思います。

結局、公明党がどちらにも踏み出しませんでした。その結果が、これまでの選挙協力のままの単独の参議院選挙であり、それが公明党の不振につながったのではないかと思います。

今後、公明党の動向次第で、衆議院がどうなるかが決まります。選挙協力を背景にした勢力分布に対し、清算が必要な事態が生じるかどうかにかかっていると思います。

なお、選挙区での自民党の不振には、ベテランの不振も重なっているようです。実力があるベテランが年齢に足をひっぱられてしまうのは残念です。人材として活用すべきです。若返りがそれほど望ましいことだと、私は思いません。年をとっていても、鋭い人の意見には耳を傾けるべきだと思います。

特に、片山参院幹事長の落選は残念だと思いました。自治省出身で官僚として活躍した後に政界入りしている人ですが、衆議院と参議院の存在意義の違いや、現在の選挙制度を背景とした政権のあり方を明確にすることができる人物で、官僚支配に対抗できる希有な政治家であっただけに残念です。官僚の利益に走る官僚出身議員も少なくない中、この人は、官僚経験を活かした政治姿勢であって、官僚べったりでないところを好ましく感じていました。官僚やメディアにとっては、うるさい議員だったと思います。この人に、代われる人材はいないのではないかと思います。

なお、官僚出身では、佐藤前国土交通事務次官が比例で当選しています。指定席だという下馬評でした。耐震偽装事件への対応の責任者としての説明は何もなかったので、個人的には好感を寄せることができない候補でしたが、この当選を受け、耐震偽装事件が風化せずに問題として残りうる余地ができたように思います。

特に、次回の衆議院選挙で政権交替が起きた場合、様々な点で注目の対象になりうる要素を持っていると思います。その前に、公務員制度改革を行って、きちんと内閣や議会が官僚の所行を追及できるようにしておくという前提が必要ですが……。

防衛関係は、英雄を投入した甲斐があったようです。ただ、組織選挙というより個人の知名度に頼る選挙になったように思われます。軒並み強力な支持母体を背景とした組織選挙で当選をめざす自民党の比例候補が、党が擁立した知名度の高い候補に破れているところも、今回の選挙の特徴ではないかと思います。少なくとも自民党に関しては、様々な政治団体が集まって政党が形成されているというより、「自民党」という看板と、候補の知名度で選挙を行っている形になっているように思います。

翻って民主党は、比例の個人得票の当選ラインは、相変わらず自民党の比例の当選ラインより低く、党名での投票が多いようです。もし、現在は自民党側から候補を擁立している勢力が、民主党から候補を出せば当選しやすいということでもあります。

これは、個々の勢力にとって、今後を考える上で、とてもややこしい状況だと思います。自民党が自民党らしくなくなっていて、これまでの組織にとって都合のよい政党ではなくなっています。

今後の政界再編がどのようなものになるか、私にはわかりませんが、アンバランスな部分が大きいので、相当もつれると想像しています。表面で、水面下で、とても複雑な展開があるものと想像します。
by gskay | 2007-07-30 05:20 | 政治と役所と業界