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新たな耐震偽装
改正前の法律ではこんな耐震偽装がされてしまうが、改正後は大丈夫。だから、改正された建築基準法に、つべこべ言うな。

新たな耐震偽装の発覚は、建築基準法改正のキャンペーンだと思います。

この論理には、問題があります。改正された建築基準法は、施行されて日が浅いばかりか、ほとんど機能していないので、耐震偽装を防げるかどうかもわかっていません。改善の効果があるかどうかはわかりません。穴がないという保証はなく、しかも、厳格すぎる分だけ、一旦見落とされたら、二度と日の目を浴びない可能性があります。にもかかかわらず、安心しろと言われても無理があります。

ただ、着工が減っていて、新しい建物が建たないので、新たな問題の発生の絶対数は減るでしょうが……。(考えようによっては、すばらしい対策です)

また、最初の偽装発覚といい、北海道のケースといい、アパといい、今回のケースといい、氷山の一角であることは明らかです。改正前の法律は信用できないと考えるべきで、改正前の建物は、全て疑ってかかる必要があります。その前提にたって、既存の建物に対して抜本的な調査や対策をとることが必要です。これは、新築を対象とした建築基準法の改正が行われたところで、解決にはなりません。住環境の安全確保は、既存の建物への対策が当面の最大の問題ですが、放置同然です。

報道については、少し理解が進んできるように思える部分があります。建築主や施工業者、元請け設計事務所を、グルだとみなして、「構図」を描いてセンセーショナルに書き立てるという報道は卒業したようです。建築に関わる責任分担を考えると、荒唐無稽。耐震偽装でヒューザーや木村建設を猛烈に追及した愚は、繰り返されないようです。(……繰り返されないで欲しいと、私は願っています)

ところで、法律の改正で、マンションも建てにくくなりましたが、地域の名大工の手による御屋敷も建てにくくなってしまいました。(ちなみに、古民家再生にあこがれを感じてきましたが、願いの実現は難しくなったか?)

マンションのような大規模な建築は、法律上の煩瑣な手続きが負担になるため、今後、住宅市場は、一戸建てが中心になるのかもしれません。その一戸建ても、手続きへの対応を考えると、マスプロダクションのメーカーのものでないと、負担が大変です。住宅供給という産業自体が、この法律改正で変わってしまいました。

住宅供給業者は、それにあわせて業態を変えなくては行けません。いかに、マンション部門から撤退し、マスプロの一戸建てで利益をあげるかが勝負です。

そういう点で、今回、建築主になっている業者については、いろいろと考えて評価しなくてはいけません。法律がさらに改正されないとすると、これが、不採算部門を切り、成長部門に集中する体制をつくるきっかけになるかもしれません。

改正された建築基準法については、ほとんど好意的な評価を聞くことができません。その逆風の中で、とりあえず、「改正していてよかったね」という雰囲気を作るために、いろいろと工夫しているのだと思います。そんな手段で乗り切れるかどうかは、現場が答えを出してくれることです。

経済統計の数値に反映されるほどの変化が予想されているのですから、甘い見通しや姑息なごまかしは危険です。
by gskay | 2007-10-16 01:39 | 揺れる システム