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検査システムの将来
建築基準法改正にともなう様々な準備が整わないまま、施行を迎え、今日に至っています。私は、準備が間に合わないのは、能力的な問題だと思っていました。しかし、意図的である可能性もあると考えるようになりました。

建築確認は滞ったままですが、その一方で、「新たな耐震偽装」では、「住宅性能評価」制度が問題を明らかにしました。「住宅性能評価」制度の有効性を印象づけるような出来事です。

建築確認などの検査業務と、住宅性能評価は重複した部分があります。その目的や詳細については、決して同じではないと思います。しかし、現実問題として、重複しています。

もし、住宅性能評価が、建築確認などの検査業務よりも優れているならば、住宅性能評価を、建築確認などの検査業務の代替えと位置づけることが可能かもしれません。

現在、建築確認は滞っていますが、もし、住宅性能評価に建築確認の代替えを認めれば、滞っている建築確認をスキップすることができます。

完全に建築確認をスキップすることはできないでしょう。都市計画などの周囲との関係の規制をクリアしているかどうかについては、建築確認でチェックしなくてはいけないからです。しかし、個別の建物の性能については、住宅性能評価によって代替えできるように思います。住宅性能評価の仕組みは、補償の制度と一体化している点も、前向きに評価すべきかもしれません。

住宅性能評価によって、費用などの負担は増えるかもしれませんが、あてにならないばかりか、適法と判断されても何も意味がない建築確認よりは良いかもしれません。

改正された建築基準法が要求しているような建築確認は、非現実的であるばかりか、意義も少ないと思います。厳格にすると称して、煩雑さと無駄な重複を要求しています。これは、マスプロダクションの小規模の建物にとっては、あまり問題にはならないようです。しかし、マンションのような規模の大きい建物や、名大工による御屋敷などは、この建築確認に従っている限り、苦しい状況に追い込まれるでしょう。

そこで、別ルートとしての「住宅性能評価」の活用です。

これまでは、建築確認と住宅性能評価は、同じ物件に対する重複する仕組みにすぎず、無駄と考えられてきました。しかし、これを、並列した別のルートにしてしまえば、それぞれの役割に意味が出てきます。

あえて、建築確認を煩雑にしつつ、肝心の責任の曖昧さを放置しているのは、金銭的な後ろ盾をもつ住宅性能評価への移行を念頭においてのことかもしれません。

既製の型通りの建物は、建築確認。オーダーメードは、住宅性能評価。

そういう仕組みで分かれていくのではないかと思います。

これなら、名大工も生き残れるし、建築確認では評価ができない先端的な建物も建てることができます。

こうした方向性を作るために、建築基準法改正が、混乱をおり込んで考えられていたとしたら、悲しいことです。多くの関係者に様々な不利益をばらまいてしまいました。高等戦術は、犠牲が小さくないと納得は得られないものです。

最初から、「複線」にすると言っていれば、状況は全く異なるものになっていたのではないかと思います。少なくとも、経済への影響は、ずっと少なくて済んだはずです。一つの制度にこだわりすぎたのかもしれません。
by gskay | 2007-10-18 01:00 | 揺れる システム