「消費者庁」
相次ぐ「偽装」の問題を、「消費者の安心・安全」の問題と考えること自体は間違いではないと思います。しかし、混乱する原因は別にあります。
混乱する原因は、行政の裁量による中途半端な対応です。 「偽装」をはじめとする不正な行為自体の処罰や取り締まりを的確に行う事と同時に、問題の後始末を的確に行うことが必要です。ところが、処罰も取り締まりも後始末も、行き当たりばったりです。不十分であったり、まと外れであったりして、何が問題の本質なのかという点は曖昧なまま、のど元をすぎれば熱さを忘れてしまうということを繰り返しています。
問題の発覚が相次ぐことは、少なくとも問題が表面に出るようになったことを評価すべきだと思います。不正な行為が相次いで発覚したことについて、規制緩和の弊害だとか、道徳の乱れだとか、拝金主義だとか言われています。しかし、「偽装」などの不正とされる行為は、今に始まったことではなく、むしろ、これまできちんと取り締まりが行なわれてこなかったり、裁量で「お代官様によるお目こぼし」が行われ、重要視されなかっただけではないかと思います。 着実に前進していて、「偽装」などの不正が放置されない社会に向かっていると思います。その傾向の延長として、「消費者庁」が構想されているのではないかと思います。 この「消費者庁」については、「一元化」は、煩雑さを避けるためには必要だと思います。しかし、その一元化によって、新しいセクショナリズムが生まれることになりかねないと思います。縦割り行政による分断への批判に対して、「一元化」した省庁を作ることで対応するのでは、ますます細分化されてしまうのではないかと思います。 批判される縦割り行政は、省庁間の交流や調整が不十分であることが問題です。従来、各省庁の壁が厚すぎて、省庁の中に排他的な人間関係が出来てしまっているのではないかと思います。 また、大学や研究機関からの登用は最低限の技術や知識を維持するために、いまや不可欠です。不正として取り上げられた問題の一つ一つを丁寧に点検すると、制度の方に不合理な部分があって最新の事情に適応できていなかったり、取り締りや後始末にあたる官庁の能力や知識が不十分であるために、誤った判断を行っている思われることが少なくありません。 さらに、薬害への対応にみられた不作為のような責任感の欠如は、問題への対応を遅らせ、被害を大きくしてしまいました。耐震偽装では、責任回避のために、対応が混乱し複雑になり、問題の本質を歪め、さらに拙速で過剰な対応が国の経済に深刻な被害を与えてしまいました。 「消費」は、生活の隅々までを含むような行為です。そして、我が国の経済構造の中核は、産業と輸出から、消費へとシフトしています。経済は、消費次第とさえ言えます。 無闇にそのような重要なものを、今の官僚や官庁に任せかせることは適当ではないと思います。官僚や官庁のもつ病弊を処理してからでなければ、「消費者庁」のような組織を作るのは危険なことです。建築基準法改正による様々な影響以上の悪夢を見ることになると思います。
by gskay
| 2008-01-09 12:19
| 政治と役所と業界
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耐震偽装発覚から、5年。建て替えが再開発事業としてすすめられています。
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