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責任の所在
ホテルの耐震偽装に関わる民事裁判の判決は、施工にあたった木村建設の責任を認め賠償を命じるとともに、イーホームズの建築確認における過失は否定しました。

木村建設については、すでに破産しているので、破産債権として認められるかもしれませんが、配当は賠償をみたすのは難しいと思います。ただ、債務保証をした別の企業が登場しているので、このホテルは請求額を確保できるかもしれません。

耐震偽装 ホテル休業に4億7500万円賠償命令(産経新聞) - Yahoo!ニュース


10月30日0時31分配信 産経新聞

 元1級建築士、姉歯秀次受刑者(51)=建築基準法違反などの罪で実刑=による耐震偽装事件で休業に追い込まれたとして、「サンホテル奈良」(奈良市)のオーナー会社が損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、奈良地裁であった。坂倉充信裁判長は開業指導を行った「総合経営研究所」(東京都)と指定確認検査機関「イーホームズ」(同、廃業)への請求は棄却。ホテルを建設した「木村建設」(熊本県八代市、破産)の債務保証をした「日動工務店」(熊本市)のみ賠償責任を認め、請求とほぼ同額の約4億7500万円の支払いを命じた。

 訴えていたのは、サンホテル奈良を所有する「増富」(奈良市)。

 坂倉裁判長は判決理由で、「ホテルは耐震基準を満たしておらず、構造上主要な部分に欠陥があった」と認定。木村建設には「瑕疵(かし)担保責任」があり、賠償責任は偽装の認識の有無に左右されないとした。

 一方で、総研については偽装を指示した事実は認められないと判断。偽装を見抜けなかったイーホームズにも過失はないとした。

 木村建設の社長は、姉歯受刑者による構造計算書偽造を知りながらサンホテル奈良側に工事代金を支払わせた詐欺や建設業法違反の罪で有罪が確定している。


「総研」についてはコンサルタント会社にすぎず、施工や設計、監理、検査・確認のどの立場でもないので、直接の不法行為がなければ追及は難しかろうと思っていました。施工や設計、監理、検査・確認については、建築の中で負うべき責任があります。あいにく、そこが曖昧でデタラメなので、ややこしいことになっています。

木村建設の場合、木村社長がこのホテルの引き渡しについて詐欺に当たるという刑事裁判で一審で有罪が確定しています。争わなかった以上は、この点については、木村建設側に有利になることはないと思います。

一方、イーホームズについても、藤田社長の有罪が一審で確定していますが、この有罪は、経理の不正に関するもののみ。耐震偽装が起こったことについての責任は、判決で明確に否定されています。

これまでの刑事裁判の経緯を考えても妥当な判決だと思います。

イーホームズに責任がないということについては、仕組みをある程度理解すると、了解できます。しかし、それでは、「建築確認」の意義は、どこに行ってしまうのでしょうか?

手続きが問題を抱えているということが明らかにされていたにもかかわらず、修正されずに放置されていたことが、耐震偽装の拡大を招きました。これは、重大な問題だと思います。

ついでに言うなら、建築確認という行政の判断自体がなければ、構図はもう少し単純になったのではないかと思っています。事前の建築確認は、役に立っていなかったどころか、不正の舞台になっていたのですから……。

これについては、本格的には争われてきませんでしたが、マンション住民の訴訟では、国を相手取っているということなので、争点になるのではないかと思います。
by gskay | 2008-11-02 06:35 | 真相 構図 処分